ひとりごと

海の向こうにある世界

ぬりえARわーるど

それはいつもと同じ時間だった。

いつも乗っている電車の扉がひらくと、僕はいつもの駅のホームにおりた。

特に代わり映えのしない地下鉄のホームだ。

いつも通る改札を抜けた後、僕はいつもとちょっとだけ違うことをしてみた。

なぜかはわからない。

ふとなにかを思いたようにポケットからiPhoneを取り出した。

スクリーンに並ぶアプリの中から魚のアイコンをタップした次の瞬間、

銀座一丁目駅の中に海が現れた。

これはkidsweekendで子供向けコンテンツを制作しているエンジニア、

ぐるたかさんが作ったARアプリだ。

味気のないコンクリートに囲まれた世界の中に現れたその海の揺らめき、

それは僕の心を穏やかに包み込んだ。

それまでテストも含めて何度も何度も遊んでいたし、

ワークショップでも展示したものだった。

ただ、外で遊んだのはその時が初めてだった。

ARアプリを室内で遊ぶか、室外で遊ぶか、ただそれだけの違い。

でも、その違いがAR(拡張現実)とは何かを教えてくれたような気がした。

その後も立ち止まっては魚のアイコンをタップして街の中に海をつくる、

そうやって僕はオフィスへ向かった。

昔の僕たちがみた世界

遥か昔、それは500年ほど前のことだろうか?

パイオニアたちが大きなリスクを背負って海の向こうにあるはずの世界を目指す、

そんな時代のある日。

波打ち際に立って水平線の彼方を見つめている人がいた。

彼か彼女かはわからないけれど、
その人の視線の先にあるのは広い空と広い海を結ぶ水平線だけ。

そして、こう考えたことだろう。

水平線の先にある世界、それはいったいどんな世界なのか。

もちろん、僕たちはその答えを知っている。

でも、その人にとって水平線の先にあるまだ見ぬ大地、
それはまさに仮想のような世界だったことだろう。

そして、パイオニアたちが新しい大地を発見することによって、
人類の現実世界は拡張していった。

未来の僕たちがみる世界

今ではVR、ARという言葉を当たり前に耳にするようになった。

僕は初めてVRゴーグルの中を覗いたとき、
iPhoneのARアプリで遊んだときはびっくりした。

そこに現れた仮想の世界は思っていた以上にリアリティを感じたし、

スクリーンの中には確かに拡張された現実があった。

この技術は今後ものすごいスピードで世界のあらゆる場所に仮想の世界を作り出し、
また現実を拡張しながら広まっていくだろう。

そして、その先には何があるのだろうか?

そして、そんな世界に産まれるこどもたちにとって仮想世界、
拡張現実とはどういうものなのだろう。

500年後、仮想だったはずの世界も拡張されたはずの現実も
ただの現実世界になっているだろう。

代わり映えしない地下鉄のホームのような。

そういえば少し前での水平線の先にはどんな世界があるのだろうか、という話。

僕たちはその答えを知っていると言った。

しかし、僕たちには分からないことがある。

その人がその水平線の先を見つめているとき何に思いを馳せていたのか、は。

ずいぶん先、500年後の人類はゴーグルやスクリーンの先にある世界を知っているだろう。

でも、僕たちがゴーグルやスクリーンの中にある世界の先をのぞきながら
どんなことに思いを馳せているのか、
それは彼らにも分からないだろう。

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